最先端半導体の国産化を目指す「Rapidus（ラピダス）」社が2月28日、新工場の建設予定地を北海道千歳市に決定しました。
北海道にとって過去最大規模の投資となる企業誘致です。北海道知事として、「メイドイン北海道」の次世代半導体工場の誘致に奔走してきた私にとっても、本当にうれしいニュースとなりました。半導体とは、スマートフォンやパソコンだけでなく、自動車や身の回りの家電など多くの製品において、頭脳の役割を果たす、欠かせない部品です。半導体の需要は年々高まり、世界的な半導体不足が続いています。
かつて日本の半導体メーカーは世界で大きなシェアを占めていましたが、高性能な半導体開発に後れをとり、現在では米国、韓国、台湾のメーカーが上位を占めています。日本国内でも半導体の生産、開発の動きが活発になってきている中、世界最先端の半導体の国産化をめざしているのがラピダス社です。
ラピダス社は、トヨタ自動車、NTTなど日本を代表する主要企業８社が出資し設立されました。その目的は、次世代半導体を開発し、日本が再び半導体分野で世界をリードすることです。ラピダス社が開発をめざすのが、回路線幅2ナノメートル（1ナノ=10億分の1）という最先端半導体の量産化。人工知能（ＡＩ）や量子コンピュータなどさまざまな分野で大きなイノベーションをもたらす野心的なプロジェクトです。
新工場建設で最先端の半導体量産に向けた投資額は５兆円規模と見込まれています。工場誘致をめぐっては、これまで経済波及効果などを期待する全国の地方自治体によって激しい誘致合戦が繰り広げられていました。
北海道知事として、私は「メイドイン北海道で世界最先端の半導体を世界に届けたい」と思い続けていました。
北海道こそ、その舞台にふさわしい。
私がそう思った理由は三つあります。
北海道が持つ「水」「ヒト」「エネルギー」の優位性です。
【水】
半導体生産に欠かせない水ですが、北海道は日本で最も水資源が豊富です。北海道の雄大な自然が育んだ水が、ラピダス社のプロジェクトを支えると考えました。
【ヒト】
次にヒト。北海道には、理工系の大学院が８校、大学が10校あります。さらに高専が4校もあるのは北海道だけです。高度な研究のための人材育成、確保の面で北海道はラピダス社のプロジェクトに貢献できると考えました。
【エネルギー】
そしてエネルギー。風力、太陽光など北海道の再生可能エネルギーのポテンシャルは日本一です。また、「ゼロカーボン北海道」を掲げ、国に先駆けてカーボンニュートラルに取り組んでいます。ラピダス社が取り組む「グリーン化の取り組み」に対し、北海道がそのトップランナーであるという自負もありました。
北海道への誘致の熱意をラピダス社の小池淳義社長に直接伝えたいと考え、２月１６日に東京都・千代田区のラピダス本社を訪問しました。
「世界最先端の半導体を世界に届ける挑戦を一緒にしていきたい」と伝えた上で、「製造や人材育成、研究を一体で行う複合拠点に加え、本社機能も進出してほしい」とお願いしました。
小池社長からは「世界一の工場を日本に作りたいと思っている。引き続き深く検討したい」と応じていただけました。
そして28日、今度は小池社長に北海道庁に訪問いただき、千歳市に新工場を建設する方針を表明していただきました。16日の私からの誘致要請に対し、早急なご英断をいただいたことに、深く感謝しています。
また、千歳市をはじめ誘致活動に携わっていただいた関係者の皆さまにも心から感謝を申し上げたいと思っております。
誘致に取り組んだ自治体の皆様の想いを背負い、実現に向けて力を尽くしていきたいと申し上げました。
小池社長からは、「世界最先端の技術をあらゆる分野から集めて、世界最高水準の工場を建設します。北海道からの全面的なご支援をよろしくお願いします」と述べられました。私からは、「半導体の技術者、専門的な知識や経験を持っている人材が、世界から北海道に集まることは非常に大きな意味を持っている」とお伝えした上で、「メイドイン北海道の半導体が、世界のあらゆる分野でみなさんの暮らし、生活、幸せを支えている。そういった挑戦を一緒に取り組めること、こんなに嬉しいことはない」と感謝の気持ちもお伝えしました。
また、「ほっかいどう応援団会議」への参加を表明いただき、北海道への応援に心から感謝申し上げます。
西村康稔経済産業相も２８日の会見で、「日米連携のまさに象徴的なプロジェクトで、議論や検討が進展していることは歓迎したい。政府としても必要な支援をプロジェクト全体の進捗を見て、検討を行っていきたい」と発言していただきました。
ラピダス社がめざす最先端半導体は、日本の半導体産業の再興・発展だけでなく、経済安全保障のカギともなる極めて重要な中核技術です。製造だけでなく、研究や人材育成が一体となった複合拠点の実現によって、北海道が振興を進めて「ものづくり・デジタル産業」の飛躍はもとより、世界中から研究者や技術者が集うデジタル人材拠点の形成につながることも期待できます。
北海道としては、「メイドイン北海道」の世界最先端・最高水準の技術を世界に届けたい。そして、研究開発や人材育成など最先端半導体の拠点整備を円滑に進められるよう、国や千歳市とも密接に連携していきたいと考えています。
ラピダス社の概要、半導体の解説については、下記URLもご覧ください。
▼北海道庁 産業振興局産業振興課HP
「令和5年2月28日 Rapidus社が、北海道千歳市に世界最先端・最高水準の半導体製造拠点の立地を表明」
